2012年12月10日

『ビッグデータの衝撃』『農家が教えるわが家の農産加工』『日本の異言語教育』ほか

この3カ月ほどの間に、読んだことを覚えてる本。書名リンク先はAmazon。


ビッグデータの衝撃城田真琴著/東洋経済新報社
深夜オンデマンドで『PERSON of INTEREST』を観ては「ジェームズ・カヴィーゼルかっこえ〜」ってうっとりしてるけど、ドラマの根幹になっている「マシン」が今、けっこう現実味のあるものだと知ったのは、つい最近。
その業界(どんな業界かもよくわかってない)の知り合い経由で、「ビッグデータ」「テキストマイニング」「Hadoop」といった言葉を小耳に挟み、好奇心で読んでみた本です。そういう用途としてはいいんじゃないでしょうか。
しかし、ビッグデータ活用って要は「おばさんAはこの本をKindle版で買い、同じ頃ポロショコラ買ったよね! 2本も!」とか、データ化されちゃうってことでしょ。
ビジネス的に興味深いとしても、常に「される側」の身としては、「つまらん世の中になってきた」というのが率直な感想。

農家が教えるわが家の農産加工農山漁村文化協会編
「農家が教える」シリーズの一つ。
肉、魚、野菜、山菜・きのこ、果物、米、油など、「ほぉー」「へぇー」と、見てるだけで楽しい。ただ、写真が古い教科書みたいで、シズル感少ないです。
好物の「薯蕷饅頭」の作り方まで書いてあって感激。いつかは作ってみたいなあ。

時評 日本の異言語教育大谷泰照著/英宝社
日本の英語・異言語教育関連を中心に、この半世紀ぐらいの間に著者がいろいろな場所で書いてきた、時評や書評をまとめた本。教育や語学に縁がなくても、ものの見方、切り口が鮮やかで、おもしろく読めました。
本書にも登場しますが、わざわざ「米百俵」の故事を引いた所信表明演説をした総理大臣が、教育に関して何をしたか、何をしなかったか、きちんと検証されないままなのが不思議。
短い文章の集合で、ちょっとずつ読めていいですが、反面、同じ話題の繰り返しがあります。

戦争論多木浩二著/岩波書店
戦争を考えてどうにも落ち着かず、精神安定のため部分的に再読。
再読したのは、主に「サラエボ観光案内」のところ。戦争のまっただ中でも正気を保つ方法が書いてある…と勝手に思ってます。いくらかは落ち着きます。
タイトルに「論」とあるものの、「戦争トイウモノハ…デアル」的なことを期待するとはずれます。
私にとっては「今、世界(日本を含む)は戦時中」と自覚して読むのに良い本。いくらか落ち着くとか、そういう意味で。

森林飽和太田猛彦著/NHK出版
数十年前まではげ山だった里山が、現代では回復(というよりはむしろ深山化)して、日本の国土を変貌させているという事実を、「森林飽和」という言葉を核に解き明かす本。
著者は森林学、水文学、砂防などの専門家だけあって、豊富なデータ、的確な指摘。これからの森の使い方、残し方への提言もあり。
本書中にはありませんが、日本の森には、原発事故による放射性物質をどうするのかという、厳しい課題も生まれてしまいました。

水資源開発促進法 立法と公共事業政野淳子著/築地書館
水資源開発促進法は、要するにダム開発促進法のこと。
巨大公共工事が止まらないわけを知りたい人にはおすすめ。タイトル見るとひるむけど、堅い内容じゃありません。
日本の官僚機構って、すごくうまく出来上がっていて、かつ状況の変化にも臨機応変、生き延びる力が強い。なるほど「優秀」だってことが、よくわかります。カギカッコ付きの「優秀」ですけど。
欲を言えば、水資源開発促進法の全文をどこかへ載せといてほしかった。全文→ 水資源開発促進法(総務省e-Gov)

『水辺のゆくへ 21世紀の水辺環境の取り組みを考える』宮沢成緒著
松江市在住の宮沢さんが、宍道湖、神西湖、中海や、斐伊川などの水辺を実地に歩いて調査した結果を、豊富なカラー写真や図版とともにまとめたもの。
「もう10年もすれば、昔の水辺を知っている人がいなくなるのでは。子どもたちに昔の水環境を伝えたい」(11月5日付読売新聞より)という危機感から書かれたそうです。
市民が見た水辺環境の変化は切実な実感を伴い、貴重です。「昔は良かった」「今はこんなにひどい」という話だけではなくて、真摯に未来に向けた提言もされています。
この本、松江の今井書店に頼んで送ってもらいましたが、送料+代引手数料が1,050円で、ちょっと「うっ」てなりました(貧乏なんで)。
それでも松江まで買いに行くことを思えば安いものです…Amazonなんかに慣れるとよろしくないです…。

『吉野川渡し場周辺の石造物』吉野川渡し研究会
吉野川、旧吉野川、今切川の渡し場周辺の、常夜灯や石碑、お地蔵さんなどの石造物を丹念に調査したガイドブック。
カラー写真と解説、地図が添えられていて、これを持って「吉野川渡し場巡り散歩」したら楽しそうです(いつか吉野川へ行くときは持っていくんだ)。
水難供養や、渡し場の安全を願って建てられた石造物を通して、川とともに生きてきた、大勢の名もない人々の思いが伝わってきます。これも貴重な記録です。
徳島の書店・小山助学館に頼んで送ってもらいました。ゆうメール対応でした。

『折敷地 ふるさと民話』岐阜県高山土木事務所
前に「折敷地『住吉さまの大杉』」で書いたものです。本と言うより冊子かな。
「ダムに沈む村」なんて簡単に言うけど、土地と結びついた人の記憶が断ち切られるって、そう簡単な話じゃないと思います。

失われた景観松原隆一郎著/PHP研究所
一言で言うと、現代日本の景観がいかにひどいか、を嘆く本。
著者が嘆いてやまない「空を分断する電線」「ケバい看板」「画一的で安っぽいロードサイドショップ」って、「目の騒音」みたいなものだと思います。
確かに、現代日本人は、日常の景観に少々無頓着かもしれません。
災害復旧や防災工事に関して「世界遺産だから景観に配慮した」なんて記述を見たりすると、わびしいですね。何にも指定されてない場所では、景観なんかどんなに見苦しくてもいいみたい。

posted by river at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) |
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