2012年11月20日

人を殺した話

自国が戦争しませんようにというのが、ささやかな望みです。せめて生きてる間だけでも。
けれども近頃、それが少し危うい感じがしています。
ええ、漠然とした話です。「ファンタージエンを信じるのが難しい」みたいな話です。

「戦争」というと、うちのご近所のおじいちゃんを思い出します。いまはもう他界されてます。
何年か前、ちょっとした用事でお宅へ伺ったときのこと。
庭先で腰掛けて打合せをして、帰り際に「見事な菊ですねー」とほめたら、そこから話が脱線。
打合せは5分で終わったのに、そのほかの話を2時間余り聞いてしまいました。

ご老人から意外な話を聞いた経験が、何度かあります。
私が名インタビュアーなのではなくて、要は「人は聞く人に向かって話す」ってだけだと思いますけど。
その日は休みで時間もあり、何よりおじいちゃんの話が面白…いや、面白いというよりは、これは二度と聞けない話だと思ったので、最後まで聞きました。

京都から取り寄せたという菊の自慢と、育て方の話が、10分か15分。
あとは、戦争の話でした。

おじいちゃんは、若くして中国へ出征した経験がありました。
うんと要約すると、いかにして敵の攻撃をかわし、現地の人を殺し、馬鹿な上官をごまかし、中国で迎えた終戦のどさくさを切り抜け、故国へ帰り着いたか、という、サバイバルの物語です。

戦争経験のある老人でも、自分が人を殺した話は語らないことが多いようですが、そのおじいちゃんは、誇るでもなく泣くでもなく、淡淡と話してくれました。
差別用語と残酷表現満載でしたが、まあ、語り口はおおむね淡淡とね。

いちばん強く印象に残っているのは、上官の命令で、命乞いする人を銃剣で刺し殺した話です。
これは漠然とした話ではありません。
命乞いの言葉や表情、しぐさ、手応えまで、うわあどうしようと思うほど、リアルに蘇るような話でした。
たぶん、語り手自身が、何十年後の今でもとりわけ鮮明に覚えてるから、聞く方にも伝わったんだと思います。

その話の中でおじいちゃんが怒ってたのは、上官のことでした。
いばるだけいばって横暴を通し、そのくせ自分の手を汚す勇気がなく、下に命令して人を殺させたと。
それでもその上官にもまた、上官がいる。その上官にもまた上官がいる。戦争で一番ひどい目をみるのは末端。殺す方も殺される方も。
そんな話でした。


機会があればご老人の話は聞いておこうと思います(もうすぐ自分も仲間入りじゃないのーという話はおいといて)。身内でも、他人でも。
死んでしまったらもう、話は聞けません。
何より、よくよく聞けば、つまらない話なんてまずありません。

人の何十年の人生が、つまらないなんてこと、ありますか。
戦争になれば、簡単に消されてしまう人生だとしてもです。

posted by river at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 雑記
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/60179751

この記事へのトラックバック